AGRICONNECT Co.,Ltd.

VISION私たちの目指すところ

十勝しんむら牧場とは

従来の「お腹を満たす農業」や「おいしい農業」から、

「健康になる農業」「食べる人のための農業」の未来型の農業を目指す、十勝しんむら牧場についてご紹介します。

経営理念食べる人のための農業を実践し、次世代に継承し続ける企業
農業の使命従来の「お腹を満たす農業」「美味しい農業」から、
食べる人のためになる「健康になる農業」を実践していくこと
酪農経営の定義「場」が持つ自然や生態系と調和しながら行う、再生産可能な経済活動

十勝しんむら牧場「十勝しんむら牧場について」https://milkjam.net/aboutus/message/(2020/08)

事業概要

名称有限会社 十勝しんむら牧場
住所北海道河東郡上士幌町字上音更西1線261番地
創業1933年(昭和8年)
設立2000年(平成12年)
代表新村浩隆(4代目)
事業内容放牧による酪農業、乳処理業、乳製品加工業、菓子製造業、飲食業
主力商品放牧牛乳、ミルクジャム、生クリーム、チーズケーキ、クロテッドクリーム
主要販路自社EC、アンテナショップ

十勝しんむら牧場は、1937年から北海道上士幌町で酪農経営を営んでいます。

2000年に法人化をし、現在の有限会社十勝しんむら牧場となりました。

1994年から放牧酪農に取り組み、自然のストレスない環境で育てた牛の生乳を絞り、ミルクジャムを中心とした加工品展開を行っています。酪農の六次産業化に取り組む先進農業法人で、ミルクジャムは、2008年に農商工連携88選に選出されています。

生乳は「放牧牛乳」として売り出し、加工品では、クロテッドクリーム、スコーンなど、特徴的な商品を製造しています。

自社商品の販売は、自社の通販サイトが中心で、その他、牧場のショールームをコンセプトとした飲食店「クリームテラス」を牧場に併設したり、帯広駅にアンテナショップを展開したりするなど自社販路も広げています。



経営規模

面積100ha(採草地37ha、放牧専用地33ha、豚用放牧地11ha)
頭数乳牛120頭(経産牛95頭、育成牛25頭)、豚60頭、馬3頭、ヤギ12頭
生産乳量750t
加工割合15~20%
社員14名
売上高2億4千万

肉肉学会「第24回資料」https://kakunosh.in/kanzaki-aging-beef/cat-nikuniku-activity-report/nikuniku-activity-report-no34/(2019/09/28)

現社長・新村浩隆氏は、曾祖父が1933年(昭和8年)に入植してから、4代目にあたります。

新村社長は、農業を始めたきっかけについて「大学3年の頃、農業を継ぐことに興味はなかったが、就職を控え、将来を考えたことが農業を見つめなおすきっかけとなった。農業が0からものを作る産業であり、一生続けられる。さらに人間がいる限りは一生ある産業であるという点に魅力を感じ、実家を継ぐことを決意した。」と話します。

1994年(平成6年)に、同社の酪農形態を従来のスタイルから放牧酪農へと大きく転換しました。

放牧酪農へ取り組む酪農家は少なく、現在でも北海道酪農全体の8%程度と言われています。

十勝しんむら牧場では、自社の放牧酪農をベースとした酪農経営を、「”場”の持つ自然や生態系と調和し、再生産を可能にする経済活動」と位置づけ、環境負荷をなるべく抑えた持続可能な酪農経営で環境との調和を目指しています。

現在の経営規模は、草地80ha・山林25haの計100ha超で、主体の乳牛に加え2015年からは放牧豚「山森野豚」の飼養を開始しました。

生乳の生産量は年間700~750tで、15%~20%は自社の加工用原料として使用し、その他は指定団体である系統への出荷を行っています。


オリジナリティ

土づくりで「おいしい草を育てる」

十勝しんむら牧場では、土づくりから始める放牧酪農に取り組み、環境負荷をなるべく抑え、生態系のサイクルを大切にした、持続可能な経営を実現しています。

同社は、「健康な牛は健康な牧草から」という考えのもと、土づくりに注力してきました。

80ha全ての草地の土壌検査を行うため、ニュージーランドの専門家に依頼し、土壌分析を行いました。

結果を基に、施肥設計し土づくりを続けています。

化学肥料の使用により弱ってしまった土に対し、土中のカルシウム、マグネシウム、窒素、微量要素などのバランスが整うよう施肥を行うことで、本来の自然な状態まで回復させてきました。

土が強くなることで、草地の微生物や昆虫などの生態系が整い、さらに牛糞の分解が促進され、栄養価の高い、おいしい草が育つようになるのです。

同社が、この取り組みを始めた当初は、土壌改良を行う農家は少なく、土、草、栄養はそれぞれ別物と考えられていました。

放牧酪農を土の環境づくりから行ってきた同社の取り組みは、非常に先進的であるといえるでしょう。


放牧で「牛を本来の姿に戻す」

同社では、牛を自然な環境下に置き、「牛を本来の姿に戻して自然に近づける」ことを目指してきました。

そのため、搾乳時以外は年間を通して1日中放牧を行っています。

放牧を行うことで、牛のストレス軽減、生産管理の省力化、さらに足腰の強化などで牛が健康になるといったメリットを実感しています。

同社の放牧の特徴としては、「集約放牧」があげられます。「集約放牧」では、放牧地を区分けし、牛が食べる量と草が成長するスピードに配慮しながら、複数の放牧区に順次牛を移動させて土地にかかる負荷を減らしていきます。

この取り組みにより、年間を通して草の量と品質を均一に保つことが可能となり、輸入穀物飼料の利用減につながっています。

さらに、質の良い牧草で育つことで、牛乳の味に雑味脂肪が入らず、味が良くなるというメリットも生じています。

30年ほど前までは、放牧酪農は北海道で一般的でしたが、現在は生産性を上げるために牛舎で飼養するのが一般的になっています。

しかし近年は、アニマルウェルフェアの観点からのみでなく、労働力面や金銭面でも様々な歪みが生じ、十勝しんむら牧場のような放牧酪農の取り組みが見直されつつあります。


放牧牛乳を活かした「ミルクジャム」の販売

現在、生乳は各地域の指定団体により一元で集荷され、様々な農家の牛乳が混合された後に、出荷が行われています。

そのため、品質にこだわった牛乳を作っても消費者へ伝えるのが難しい現状です。

同社は「放牧酪農」で作った良質な生乳を消費者の手元へ届けたいとの想いから、2000年に「ミルクジャム」の加工製造を開始しました。

十勝しんむら牧場「十勝しんむら牧場について」https://milkjam.net/aboutus/shop/(2019/09/23)

生乳の加工品としては、アイス、バター、チーズなどが一般的です。

しかし、新村社長は知人から「ヨーロッパではミルクジャムという商品が販売されている」「一般的なアイスやバターではなく、素材を活かした加工品を作るべき」とアドバイスを受けたことをきっかけに、日本で初となるミルクジャム開発に取り組みました。

「考え方が柔軟になり従来の型にはまらない商品開発が実現した」と話します。

発売当時、日本には「ミルクジャム」という市場自体がなく、競合も存在しません。

同商品は、初月から売上100万円を超え、一躍ヒット商品となりました。

日本で販売される乳加工製品の中で、農家自身が価格決定権を握れているものは多くありません。

同社は、自らが価格決定権をもつ商品の開発を成功させ、収益拡大と安定経営に繋げています。

消費者のニーズを敏感にくみ取り、ニッチな市場に参入したことは非常に斬新な取り組みだといえます。


消費者と繋がる「ショールーム」の運営

2005年、同社の「6次化推進」の取り組みの一つとして、牧場のショールームをコンセプトとしたファームレストラン「クリームテラス」をオープンしました。

オープンの背景について、新村社長は「農業の役割には、生産だけではない。草の大切さ、土や牛に触れる体験を通して人間形成に繋げることが重要だ。

まずは食べてもらう人に、食べ物を育てる環境を知ってもらうことに大きな意義がある」と話します。

「クリームテラス」のメリットは、消費者へ直接「新しい食べ方」の提案が行える点にあります。

「ミルクジャム」は一般のジャムと同様、パンと食べるのが一般的ですが、同施設ではコーヒー、紅茶に入れるなど、応用した食べ方提案を行っています。

このような食提案により、用途が増え、使いきれずに賞味期限を切らしてしまうことが少なくなるほか、消費量の増加につながることが期待されます。さらに、自社で新商品を開発した際は、店頭で消費者の生の声を聞いて製品開発に活かすこともできます。

また「クリームテラス」は、十勝しんむら牧場の生産現場を伝える場にもなっています。

牧場に併設しヤギを飼うなど、自然の中で動物と触れ合う機会を提供しています。

牛がどのような環境で育てられ、牛乳がどのような環境で管理されているか、生産現場を消費者に直接伝えることで、更なる「安心」を与え「興味」を喚起しています。



今後の計画

適正な規模で付加価値を生む

近年、飼料の化石燃料や輸入飼料の価格が大きく変動しています。

多くの酪農家は、こうした外的要因により経営が圧迫されています。

十勝しんむら牧場では、このような外的要因に左右されない経営基盤を築くため、放牧酪農を導入し、輸入穀物飼料や海外資源に頼らない酪農経営を実現してきました。

新村社長は、

「貿易自由化への枠組みは1990年前から進んでいて、今のTPP実施の流れは誰もが予想できたことです。良い、悪いは別として、TPPが締結された場合でも、しんむら牧場は勝ち残ることのできる経営基盤を築いてきた」

「一般的に事業展開は規模拡大が生き残る道と言われているが必ずしもそうではない。損益分岐点を考えた時、適正な規模を超えると変動費や固定費が多くなり、スケールメリットはなくなってしまう」と指摘します。

また、十勝しんむら牧場では、現在の規模、頭数が適正な規模であるとし、

「現在の経営規模と生産規模を守った上で、いかに付加価値を創出できるかが重要。さらに質の高い牛乳作りをめざし、収益をあげて行きたい。その一環として生乳加工製品による6産業化をさらに推し進める」

と話します。



コメント

北海道全域で、他にはない滞在型のメニューを用意した「アグツーリズム」に取り組んでいく必要があると語る新村社長。

今後の取り組みにも注目です。


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