陸上養殖とは
地域で消費するものは地域で育てる。
最先端技術によって、水・給餌・酸素などの環境コントロールを行い、
魚の個体別管理によって美味しく新鮮な魚を養殖します

FishFocus「SAMHERJI FISH FARMING MOVES TO ACQUIRE LAND-BASED FARM」https://fishfocus.co.uk/samherji-fish-farming-moves-to-acquire-land-based-farm/(2020/10/16)
目次
養殖とは
養殖とは、魚・貝・海藻などを人工的に飼育・繁殖させることを指します。
養殖には、「海水面漁業の養殖」と「内水面漁業の養殖」の2種類があります。
海面の養殖
海水面漁業とは?
「海面」において水産動植物を捕獲する事業を指します。
海面には、
● サロマ湖・能取湖・風蓮湖・温根沼・岸湖(北海道)
● 加茂湖(新潟県)
● 浜名湖(静岡県)
● 中海(島根県・鳥取県)
が含まれます。
水産動植物には、くじらとイルカを除き、海に生息する哺乳類(海獣)は含まれません。
海水面漁業の養殖方式
4種類の方式があります。
● 小割式 海を網で区切り、その中で魚を養殖する方式
● 垂下式 いかだなどに紐を括り付け、貝類や海藻類を海中に吊るして養殖する方式
● 築堤式 網や堤防などで湾を仕切り、その中で魚を養殖する方式
● 地まき式 砂浜に貝をまいて、大きくする方式
海面漁業の養殖課題
第一に、地域が限定されます。静かで穏やかな沿岸地域でなければなりません。
自然環境で行うため、直接的に天候や災害の影響を受けるためです。
プランクトンの異常増殖(赤潮)や、気温上昇による水温の上昇(高水温)によって死んでしまったり、
台風や津波で養殖施設ごと流されてしまったりもします。
また、死んだ魚や餌、排泄物などで環境を汚染してしまわないよう、清掃作業も欠かせません。
内水面の養殖
内水面の養殖
「内水面」は、海面に対して内陸の水面を指します。
海水に対して、主に淡水域の湖沼河川の総称として用いられます。
日本では、国土の約7割を占める森林の木々と土壌が、美しい水の恵みをもたらしてくれています。
そのため、地域ごとに内水面で様々な漁業が営まれてきました。
アユ・ワカサギ・ウナギ・コイなど、和食文化と密接に関わる様々な水産物も、内水面漁業の産物です。
内水面漁業の養殖方式 (通称:陸上養殖)
2種類の方式があります。
● かけ流し式 小川や海から水を取り入れて水槽に入れ、水槽から汚れた水を排水する方式
● 閉鎖循環式 水槽の水を浄化して、再び水槽に戻す方式
内水面漁業の養殖課題
コストが高く、現状はほとんどがかけ流し方式による養殖です。
閉鎖循環方式で養殖されているのは、ヒラメ・トラフグ・クルマエビ・アワビが大半を占めます。
何れも高級品として取り扱われる魚介類で、コスト回収の見通しが立てやすいためです。
海面漁業と内水面漁業の養殖の違いは?
かけ流し方式 |
閉鎖循環方式 |
||
コスト |
イニシャル |
低 |
高 |
ランニング |
低 |
高 |
|
生育環境の制御 |
疾病対策 |
ほぼ不可 |
可 |
温度調節 |
ほぼ可 |
可 |
|
成長速度 |
不可 |
可 |
|
自然環境への負荷 |
あり |
なし |
|
ブランド魚の登録に際する魚種制約 |
あり |
なし |
|
場所の制約 |
あり |
なし |
|
漁船・漁具の必要性 |
あり |
なし |
|
薬品の使用量 |
あり |
基本なし |
漁獲量の動向
日本の漁獲量
2020年(令和2年)、日本の漁業・養殖生産量は417.5万tでした。
日本の漁業における養殖割合は、24%ほどです。
漁業 |
海面 |
4175,000 |
漁業 |
4123,500 |
まいわし、さば類 ほたてがい、かつお |
||
養殖業 |
967,000 |
魚類 |
248,900 |
ぶり類、まだい |
|||
貝類 |
310,300 |
牡蠣、ほたてがい |
|||||
海藻類 |
396,800 |
のり、わかめ |
|||||
内水面 |
50,940 |
漁業 |
21,759 |
しじみ、さけ・ます類、あゆ |
|||
養殖業 |
29,181 |
うなぎ、ます類、あゆ、こい |
■漁業・養殖別
漁業 |
76% |
海面 |
99% |
内水面 |
1% |
||
養殖 |
24% |
海面 |
97% |
内水面 |
3% |
農林水産省「令和2年漁業・養殖業生産統計」https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/gyogyou_seisan/gyogyou_yousyoku/r2/index.html(2022/01/31)をもとに作成
■海水・内水面別
漁業 |
海面 |
99% |
漁業 |
77% |
||
養殖業 |
23% |
魚類 |
26% |
|||
貝類 |
32% |
|||||
海藻類 |
41% |
|||||
内水面 |
1% |
漁業 |
43% |
|||
養殖業 |
57% |
農林水産省「令和2年漁業・養殖業生産統計」https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/gyogyou_seisan/gyogyou_yousyoku/r2/index.html(2022/01/31)をもとに作成
コメント
世界人口の増加や食生活の変化に伴い、魚介類の消費は世界的に伸び続けています。
限りある水資源を守り、持続可能な漁業を推進していかなければならない状況下で、唯一の解決策が「養殖」です。
1980年、世界の養殖の比率はわずか9%ほどでした。
それから30年後の2010年、養殖は46%に達し、更に10年後の2020年には52%と半数を超えました。
Food and Agriculture Organization of th United Nations「The State of World Fisheries and Aquaculture 2020」https://www.fao.org/documents/card/en/c/ca9229en(2020)
養殖が拡大していく中で「内水面漁業の養殖方式(陸上養殖)」は、より持続可能性の高い養殖として注目を集めています。