ー以前は、どんな会社で働いていたのですか?
湯本:新卒で入ったのはITコンサルティング企業で、クライアント企業の営業から会計までの情報を一元管理する基幹システムをゼロから自社で構築するスクラッチ開発を行う部門にいました。
その次は、奥さんの家族と子供服の輸入販売事業の会社を興しました。自営業です。子供服出店の話は家族内でずって出ていたので、ITコンサル時代に体調を崩して休職したタイミングで、改めて家族との時間を大切にしたいと考えた結果、自営業で生計を立てていく道を選びました。
しかし、扱っていたブランドは良質で良いお客さんも付いていたのですが、十分に売上が安定するところまでは持っていけませんでした。
ーアグリコネクト(株)にエントリーをした動機を教えてください。
湯本:お試し移住を通して、地域活性が自分の中のテーマとして生まれたからです。地域活性の一つの形として、地域の農業事業体が発展していくことが重要で、その支援をしたいと考えていました。
ーお試し移住がきっかけで地域活性に興味を持ったのですね。お試し移住をしようと思ったのはなぜですか?
湯本:輸入販売事業の次の仕事を考える中、子供の体調がよくない日々が続いていました。原因は不明でしたが、ちょうど東日本大震災の時期に幼児だったこともあり、地方移住の可能性が家族の間で浮上していたんです。しかし、いきなり移住するのはハードルが高いので、いくつかの自治体が行っている「お試し移住サービス」を利用し、福岡県筑後市に一ヶ月移住しました。
ーお試し移住はどうでしたか?
湯本:2つわかったことがあります。まず子供たちの体調がすこぶるよくなりました。これは本当にうれしい出来事でした。自然も豊かで食べ物は安くておいしい。交流させていただいた方々は素敵な方ばかりで、ずっとそこで暮らしていきたかった。
しかし、2つ目のわかったことが問題でした。地方ではかなり仕事が少なかったということです。「活気が年々減ってきているが、どうしたらよいかわからない。多くの人が福岡や東京に行ってしまう。」という声を地域の方々から伺いました。
ー人口流出や働き口の少なさは地方の課題ですよね。その課題に対してどのようなアプローチを考えていましたか?
湯本:前職で培ったITスキルを活かして現地の企業に就職をと考えましたが、福岡市や北九州市と違って筑後市周辺では求人情報はほとんどありませんでした。
市役所の方には、地域に新しい仕事を創り、人を呼び込み、活性化のサイクルを生み出す「地域おこし協力隊」を紹介されました。
しかし、3年間という定められた活動期間に事業化がうまくいかないケースが多いということも同時に教えていただき、私にとっては成功確率が低そうだなと思いました。
しかし、大好きになった筑後市のように地方・地域の各地で活気が減っているのであれば、リアルに寂しく感じましたし「大好きで素敵な日本の各地域が活気を損なわないような仕事はないだろうか?」「そういう仕事に自分が貢献できる道はないだろうか?」という考えが生まれていました。
ーお試し移住終了後はどうしたのですか?
湯本:東京に戻ってからは、引き続き地方移住の可能性も捨てずに転職活動に取り組みながら、有楽町の交通会館によく通いました。そこでは各自治体が訪問してくる移住検討者に対して自地域の魅力や働き口を発信していました。
そんな中、地域の働き口としてプレゼンをしている企業は、農業法人が多いことに気づきました。それまで農家とは人生で交流したことがほとんどなかったのですが、自治体に依頼され地域の代表として有楽町までいらっしゃっている農業法人は、自地域を飛び越え、はるか遠くの地方にまで営業行脚をしていたり、PCの使えない中で輸出をしていたり、売上が毎年倍増していたり、東南アジアで生産を行う法人を立ち上げようとしていたり、イメージしていた農家とは全く異なりました。
そんな彼らから聞いたのは「地域活性というものにどう取り組むべきかわからない。しかし自分達はその地域で行っている農業がより魅力的な事業になるように、多くの人が農業をかっこいい仕事だと感じるようにしたい。そのためには突き抜けること。地域では異端と思われるかもしれないけど、強く大きくなっていくことを目指していきたい。そうすることで雇用が拡大し、地域に新しい人を呼び込む受け皿が生まれ、経済が大きくなり、地域活性に繋がるのかもしれないね」という言葉でした。
「これだな」と思いました。農業や農家の事は全く知らなかったのですが、知り合った人たちは熱い想いを持っている人が多くて、話を聞いて心底ワクワクしました。農業が強くなっていくことが、日本の地方・地域を強くしていくことに繋がると確信したんです。
そこで2つの選択肢ができました。強い農業を目指す農業法人に参画するか、それとも彼らのような強い農家を「支援する人」を目指すか。あまりに農業とは無縁だったため、農業法人の日々の業務でどこまで貢献できるかわからない、という率直な不安があったことは事実です。そんな時「農業を強くする。農業を産業化する。」ことを理念に掲げる農業コンサルティング企業アグリコネクト(株)の存在を転職アドバイザーから教えていただきました
IT系とはいえコンサルティング企業での勤務経験がある自分には、農業法人よりは親和性が高く、貢献できることも多いのかもしれないと感じエントリーをしました。
ー「農業を強くする」は、アグリコネクト(株)のコアメッセージですよね。
湯本:社員全員のビジョンやアプローチはそれぞれ異なりますが、その1点はみんなが大事にしている部分だということが、入社してからも分かりました。
今後も想いある農家さんと企業を繋げて農業を強くし、大好きな地方・地域の活性化に貢献したいと考えています。