こう考える!アグリビジネス参入
農家ではなく消費者のために
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アグリビジネスを取り巻く政策
2021年(令和3年)5月、農林水産省はSDGs時代の新戦略として「みどりの食料システム戦略」を掲げました。
この戦略は、2020年(令和2年)5月に欧州でスタートした「Farm to Fork」(農場から食卓まで)をもとに、
「食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する」ことを目的にしているとされています。
しかし、Farm to Forkとは根幹が異なっています。
「Farm to Fork」の根幹
Farm to Forkは「消費者の意識改革」を手段に実現しようとする根幹があります。
消費者に対し、たくさん作っては捨てているフードロスへの疑問、均衡を失した食料需給システムに対する課題を投げかけることで意識を改革するというのが最初のステップです。
次に、意識が変わったマーケットに対して農業経営も合わせていこう、という流れで促します。
だからこそ Farm to “Table” ではなく Farm to “Fork” なのです。
SDGs、カーボンニュートラル、アニマルウェルウェア、全てに繋がり、国産の農作物消費を促す上でも違和感が生まれない一貫性があります。
JGAPの元になった「GAP」(Good Agricultural Practices)も同様です。
「消費者に正しいもの、本当に良いものを届ける、という責任を果たすための基準」という根幹があります。
「農場ではこの基準で作ってもらわなければ売れない、買ってもらえないから仕入れない」という、
小売りの意見 すなわちマーケットの視点が起点になっています。
European Commission「Farm to Fork Strategy」https://ec.europa.eu/food/horizontal-topics/farm-fork-strategy_en(2022/02/01時点)
「みどりの食料システム戦略」 の根幹
では、日本において消費者=日本国民は「みどりの食料システム戦略」を認知していると言えるでしょうか。
2022年(令和4年)2月現在、消費者に伝わるような情報発信や広告は出ていません。
「有機農業に補助金が出る」と発信しても、話題にするのは当然農家ばかりです。
しかし日本の農家は、107万経営体のうち103万経営体=96%が3,000万以下の売上*です。
先進国農業において、3,000万円以下の農家は「趣味的農業者」に区分されます。
「本業」 に区分される 3,000万円以上の売上の経営体は、4万経営体=わずか4%ほどです。
*農林水産省「2020年農林業センサス」https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noucen/index.html(2021/04/27)
4万の農家のためにではなく、1.2億人の国民のために「農業はどうあるべきなのか」、
この視点が、これからのアグリビジネス参入検討において最も重要と言えます。
コメント
Farm to Forkを主導する「European Commission」(欧州委員会)のHPには、洗練された素材が豊富に掲載されています。
また、行動科学を用いた問題解決を専門とする カナダのコンサルティング会社「Sacred Cow Company」は、
カーボンニュートラルに関する優れた素材を掲載しています。
「なぜ、農業がカーボンニュートラルに最も貢献できるのか」を図式化したオリジナルレポートなどは、
時代のイメージを捉える上で大変参考になります。是非ご参照ください。
SACRED COW「Are Cow Farts Destroying the Planet?」https://www.sacredcow.info/blog/are-cow-farts-destroying-the-planet(2022/02/01時点)