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VISION私たちの目指すところ

放牧畜産とは

放牧畜産とは、畜産の業態の一つで「家畜を放し飼いにすること」を指します

反対に「家畜を畜舎の中で飼うこと」を「舎飼い」といいます

動物本来の生き方を重んじることで、健康で美味しい畜産品が生まれます


畜産と酪農

「家畜」というと、みなさんは何を思い浮かべますか?

辞書で引くと、「人間の生活に役立たせる目的で飼育される動物」*とあります。

家畜は用途によって、農用動物・愛玩動物・実験動物の3つに分けられますが、今日では、家畜=農用動物の意味で使用されています。

農用動物には、牛・馬・羊をはじめ、ヤギ・鶏・豚・ロバ・ウサギ・鶏・鴨などが含まれます。

これらの動物を飼育して繁殖させ、乳製品・肉・卵・皮革などを生産することを「畜産」と呼びます。

「畜産農家」「畜産家」と呼ばれる農家は、この畜産を営む農家を指します。

畜産の中でも、牛乳や乳製品の生産に特化した産業が「酪農」であり、酪農を営む農家を「酪農家」と呼びます。

*小学館「デジタル大辞泉」(2020/08)


農業における畜産の位置づけ

2020年(令和2年度)は、農業総生産が8.9兆円の規模でした。

畜産はその35%=3.2兆円で、最も大きな割合を占めています。

畜産の内訳は、生乳24%、肉用牛23%、豚肉20%、鶏卵14%、鶏肉11%となっており、

「酪農」が約半分を占めていることが分かります。

農林水産省統計部「令和2年農業総産出額及び生産農業所得」https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/seisan_shotoku/r2_zenkoku/index.html(2021/12/24)



放牧の種類

放牧には「経営内放牧」と「公共放牧」の2種類があります。

「経営内放牧」は、自分で所有して耕作している土地で行う放牧のことを指します。

反対に、「公共放牧」は公共牧場での放牧を指します。

「公共牧場」とは、自分で所有している土地ではなく、地方公共団体や農協、地元の農民グループからなる「牧野組合」などが所有する土地です。

元々は、集団で生産を行い、地域の畜産振興を図るために設けられた牧場です。


放牧畜産の割合|乳牛

放牧とそれ以外=舎飼いの割合は、酪農に限り明確になっています。

2018年時点の調査で、全国の乳用牛の酪農家15,700戸のうち、経営内放牧している農家は17%、公共放牧は36%となっています。


全国戸数割合
乳用牛の酪農家15,700100%
 ∟経営内放牧 ∟2,616 ∟17
 ∟公共放牧 ∟5,615 ∟36%
 ∟その他(放牧以外など) ∟7,469 ∟47%

生乳の生産額の約半分を占める北海道では、経営内放牧が39%、公共牧場を利用している経営が52%と高い水準になっていますが、

都府県は、経営内放牧が2%と低く、公共牧場利用は26%となっています。

都府県は土地条件の制約等から経営内放牧が難しい状況にありますが、公共放牧は雌牛の育成を中心に一定の利用が行われています。

農林水産省「第2回検討会資料2(放牧等による農地の多様な利用について)」(2020/07/07)


放牧畜産の割合|肉牛

全国の肉用牛の酪農家41,800戸のうち、経営内放牧している農家は9%、公共放牧は9%に留まっています。


全国戸数割合
肉用牛の酪農家41,800100%
 ∟経営内放牧 ∟3,708 ∟9%
 ∟公共放牧 ∟3,787 ∟9%
 ∟その他(放牧以外など) ∟34,305 ∟82%

北海道における経営内放牧は31%、公共牧場を利用している経営は16%となっています。

都府県は、経営内放牧が8%、公共牧場利用が9%の利用です。

放牧戸数の推移を全国ベースでみると、総飼養戸数が減少していることから減少傾向ではありますが、放牧戸数の割合は概ね横ばいで推移しているといえます。

農林水産省「第2回検討会資料2(放牧等による農地の多様な利用について)」(2020/07/07)



放牧のメリット

家畜にとってのメリット

放牧では、家畜は自分で動いて食べ物を得なければならないため、必然的に運動量が多くなります。

放牧地における運動量は、気候環境、草量、群の年齢・頭数など様々な要因に影響されます。

馬の運動量の目安となる「移動距離」に関する調査*では、7時間の昼間放牧で1日当たり4~8km、19時間で13~18km程度でした。

運動によって心身共に健康な状態となった家畜は、繁殖能力が向上し、舎飼いよりも長生きすることも分かっています。

牛などの大型家畜の場合、分娩前後の事故や障害のリスクも軽減されます

*日本軽種馬協会「草地管理ガイドブック」(2018/03/01)


農家にとってのメリット

放牧では、飼養にかかるコストを削減することができます。

まず、家畜が自ら放牧地で食べ物を摂取することを基本とするため、飼料の生産や給餌の手間の低減を図ることができます。

排泄も放牧地に直接するため、排せつ物の処理を省力化できることができます。

排泄物のふん尿は草地に還元されるので、草地の肥料を節減することにも繋がります。

また、雑草も生えないため、除草剤などの化学薬品や耕うん機などの機械を使用する必要もなくなります。


アニマルウェルウェアの観点から

日本の乳牛の大半は人工授精で妊娠し、仔牛を生みます。

仔牛は生後1歳半ほどで人工授精を受け、2歳半には母牛となって搾乳されるようになり、以後1.5回ほど出産して わずか5-6歳で乳牛としての生涯を終えます

脚が不自由になるほか、不妊や乳房炎になり、と殺(屠殺)されるためです。


乳牛のライフサイクル月齢目安日数目安
離乳~生後2カ月
育成~12カ月
人工授精①~1歳6カ月
妊娠①1歳6カ月~2歳4カ月300日
出産①2歳4カ月
搾乳期間①2歳4カ月~3歳4カ月300日
人工授精②2歳6カ月~2歳8カ月60日
妊娠②2歳8カ月~3歳6カ月300日
乾乳期間①3歳4カ月~3歳6カ月60日
出産②3歳6カ月
搾乳期間②3歳6カ月~3歳4カ月300日
人工授精③3歳8カ月~3歳10カ月60日
妊娠③3歳10カ月~4歳8カ月300日
乾乳期間②3歳4カ月~3歳6カ月60日
出産③4歳8カ月
搾乳期間③3歳6カ月~4歳6カ月300日


本来牛の寿命は10-15年なので、乳牛がいかに短命か分かります。

1頭1頭が短命であるがゆえに、頭数を維持するために毎年多くの後継牛が必要になります。

寿命5年で2.5産の乳牛100頭を維持する場合、毎年40頭の後継牛が必要になります。

放牧の牛は、本来の寿命程度に長生きするため、後継牛の頭数も少なくて済みます。

寿命10年で4産の乳牛100頭を維持する場合、毎年必要な後継牛は25頭です。



コメント

耕作されなくなった土地を利用して放牧を行うことで、地域の景観を保つこともできます。

体重500kgの⽜1頭では、約1ha =1万㎡ もの広さを半年間管理することができ

35度以下であれば傾斜地や段差地形の耕作地でも放牧が可能です。

耕作放棄地のままでは誰も訪れませんが、放牧地となることで都市生活者や学生が訪れ、畜産理解や振興のきっかけにもなります。


参考

農林水産省「放牧をめぐる情勢報告」(2018/10/12)

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