ここがポイント!アグリビジネス参入
LEDに頼らず儲かる植物工場に
「植物工場」や「野菜工場」というと、生産コストの低下というメリットに目が行きがちです。
しかし、それだけで採算を合わせるのは難しいのが現状です。
省庁からの補助金を受けて参入した企業も、大小問わず次々と撤退しています。
アグリビジネス新規参入や、植物工場ビジネスへの新規参入を検討する上で、押さえるべきポイントについて解説します。

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植物工場のブーム

植物工場は過去30年に渡り、3度のブームを迎えました。
1985年の1次、1990年の2次に続き、2009年に植物工場が国の成長戦略に記載されたことが契機となった第3次ブームが起こり、現在に至ります。
調査会社の予測では、2020年に130億、2024年で360億円といった市場成長も見込まれています。*
矢野経済研究所「プレスリリースNo.2504 植物工場に関する調査を実施(2020年)」https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2504 (2020/09/23)
LEDによるコストカット
LEDの導入によるエネルギーコストの低下、そしてLEDそのものの生産コストの低下によって、
植物工場で生産した作物の価格が安くなることはあります。
しかし、これだけでは不十分なのが現状です。
例えばレタスの場合、植物工場産は現在800~1,000円/kgほど、
露地栽培産の約300円/kgに対して、競争できる価格ではありません。
価格差を埋めるには「マーケット」の開拓と「ビジネスモデル」の確立が非常に重要です。
植物工場に合った 「マーケット」 の開拓
植物工場価格でも買ってくれるマーケットの1つに「コンビニ」があります。
コンビニにおけるレタスの買い取り価格は、現在800~1,000円/kg、植物工場産でも十分競争が可能な価格です。
買い取り価格が高い要因は4つあります。

● 天候に左右されず安定供給が可能なこと
● 歩留まり率が非常に高いこと
(露地栽培産レタス:約5割、植物工場産:8~9割)
● 農薬をほとんど使わないことによる安全性の高さ
● 加工時における洗浄コストの低さ
メリットが活きるサラダやカット野菜などの中食マーケットは、コンビニ以外でも伸びています。
スーパーの惣菜向けなどを中心に直近10年程で3~4倍に成長、今後も期待できる市場です。
植物工場ならではの 「ビジネスモデル」 の確立
既存の農業生産とは異なるビジネスとして、可能性を見出すことが重要です。
植物工場はコストがかかりますが、その分、品質や量を安定させ、長期的に計画し、需要に沿った供給が可能です。
しかし、現行の農業生産ビジネスのやり方では、そのメリットは活かされていません。
新たなビジネスモデルの例としては、
● 小売との間で長期での買い取り契約を結ぶモデル
● 出資、ハード提供、工場の運営をそれぞれ分離し、別のプレイヤーが行うモデル
などがあります。
いずれも米国では先行事例があります。
投資とリターンの計画が立てやすく、異業種からも農業への参入を検討しやすいモデルです。
コメント
今起きている植物工場ビジネスの潮流は、過去に起きた2回のブームとは全く異なります。
また、既存の露地栽培などの農業生産とも異なる、全く新しい可能性を秘めたビジネスです。