AGRICONNECT Co.,Ltd.

自治体とJA、民間企業が一体となり新規就農者支援に力を注ぐ

2023年04月05日官公庁・自治体向け事例

クライアント情報

一般社団法人ニューアグリベース様

ご担当者様

業務執行理事
児玉 洋平様


事業内容

宮崎県新富町の産業振興課が主体となり、農業を次世代へとつなぐ人材育成に取り組む中、2018年に新富アグリカレッジが誕生。新規就農者の育成や就農支援のサポートの一翼を担う。2021年には、新富町と児湯農業協同組合が一体となって新たに農業公社を設立。一般社団法人ニューアグリベースとして、新規就農者支援を行うとともに、持続可能な地域農業の実現を目指す。農家や民間企業とも連携しながら「攻めの農業」を実践するべく活動を続けている。


農業の担い手育成のために新規就農者支援が急務だった

宮崎県新富町は人口約16,200人、面積61.63平方kmで、農業が基幹産業の町です。農地面積約2,160haのうち、半分は水田、半分が畑で、水田地帯ではトマトやピーマン、キュウリなどの施設園芸もさかんに行われています。畑では焼酎用の甘藷をはじめダイコンや茶、養鶏、肉用牛繁殖、数は少ないですがマンゴーやキンカン、ライチなども栽培しており、農業生産額は110億円に上っています。

一方で、20年前には約1,100戸あった農業経営体数が約600戸にまで減少しており、農業の担い手確保が急務でした。2016年に地方創生推進交付金を活用して、新規就農者の確保をサポートしていくことが決まり、当時の新富町の町おこし政策課が農業実践塾の運営に取り組むことになりました。プロジェクトの支援を外部企業にお願いできないかと検討していたときに、宮崎県で農業経営塾を運営していたアグリコネクトさんも支援企業のひとつとして候補に上がったのです。

最終的にアグリコネクトさんにお願いすることになったのは、3年にわたる長期プロジェクトの事業計画が年度ごとに明確に整理され、無理なく進められるものであったこと、農業経営塾をはじめとするこれまでの実績評価が決め手となりました。


体験研修参加者募集から研修実施までの3カ年サポートを依頼

2017年には新富町の産業振興課が主体となって、新富町新規就農者等育成支援協議会を設立し、その後、新富アグリカレッジをスタートさせることになりました。当初は、施設園芸でのピーマン栽培に特化して新規就農研修を設定することになり、アグリコネクトさんには、体験研修の参加者募集前の準備から実際に研修に来てもらうところまで3年間のサポートをお願いしていました。

アグリコネクトによる新富町新規就農プログラム(新富アグリカレッジ)の支援内容
■新規就農プログラムの事業主体組成に関わる支援
■新規就農プログラム(カリキュラム等)の設計に関わる支援
■新規就農者募集に係る支援
■新規就農プログラムのホームページ制作
■新規就農プログラムに係る資料などの整備
■体験研修の企画・実施
■一期生の研修実施に関わる支援

1年目は座学のプログラム作り、研修先農家の選定、研修マニュアルの作成、
2年目はホームページやポスター、パンフレットといった集客ツールの制作や集客方法の検討・実施、、一期生募集の体験研修の企画・実施、
3年目は一期生の研修の実施支援、二期生募集の体験研修の企画・実施など、多岐にわたりアドバイスをいただきました。


新規就農希望者への情報提供や研修システムが充実

アグリコネクトさんからご提案いただいた体験研修プログラムの内容には、初期の段階から参加者が地域と関われるプランが盛り込まれていましたね。家族で移住して新規就農を目指すとなると、生活の利便性や環境についても心配です。町内を巡回しながら、学校や病院などの施設がどこにあるのかを見てもらえたのはよかったと思います。

農業体験に関しても農家を回って収穫を体験するだけなく、就農2〜3年目の先輩農家を囲んでざっくばらんに意見交換ができる会を設けるなど、地域の農家とのコミュニケーションがはかれたことも有意義だと感じました。新規就農希望者がどんなことを知りたいのか、地域のなかにいる私たちでは気づかないことを客観的に提案してもらえたことはメリットでした。

東京にいるアグリコネクトさんの担当者とは、常にメールで情報交換していましたし、体験研修を実施した際には、担当者がこちらに来て現場で一緒にサポートしてもらえたことも非常に助かりました。こちらからの注文が多くて、大変だったかもしれませんが(笑)。

完成した成果物は、その後も新規就農者を獲得するうえで大いに役立っています。新規就農イベントなどに出展すると「ホームページを見た」と声をかけられることも多いですし、パンフレットやポスターなど目に見える形のツールがあるので、実績をアピールしやすいのもいいですね。

児湯管内では、新規就農者サポートの体制づくりが進んでいない地域がまだまだ多いのですが、新富町には提示しやすい材料と新富アグリカレッジをはじめとして農業実践塾などの受け入れ体制が整っているので、新規就農者を呼び込むのに有利だと感じています。


戦略的かつ効果的に集客し、個人にあった支援を行う

アグリコネクトさんにプロジェクトの支援をお願いした当初は、町の基幹産業である農業の担い手や後継者不足をなんとかしたい、という思いから「とにかく人に集まってほしい」と考えていたこともありました。体験研修を終えた後で受け入れ先の先進農家と話をしていて感じたのは、どういう人を呼び込むべきか、ターゲットを絞ることも大切だということ。アグリコネクトさんのような農業コンサルティング会社にサポートしてもらい、戦略的で効果的な集客を狙うのは無駄ではないと思います。

新富町では、新規就農希望者が相談に来る窓口は、農業振興公社や普及センター、町役場、JA、そして私たちのニューアグリベースなど多岐に渡ります。相談を受けたら、まずは役場の産業振興課へ情報共有を行い、その後、希望者がどのような目的をもって農業を志しているのか、ほんとに農業をやっていく意志があるのかを見極め、その人に適した研修に導くようにしています。

アグリコネクトさんにサポートしていただいた1回目の体験研修への参加募集に対して、実際に体験研修に参加したのが8名、体験研修後に全員と面談を行い、意志と適正を確認し、その後、3名は新富町で就農しました。現在は、新富町で合計11名の新規就農者が誕生しています。

新富アグリカレッジ卒業生のインタビュー記事はこちら
https://agripick.com/3382


農業の担い手育成とともに企業の農業参入サポートも視野に入れていく

新規就農者への支援では、農地や技術指導、就農後の巡回など、町の産業振興課を中心に動き、5年後には認定農業者に、さらに先進農家として活躍していただけるように、ほかの地域に負けないようにサポートを続けているところです。

アグリコネクトさんには、ピーマン栽培に特化した研修プログラム作成に協力していただきましたが、基礎がしっかりとしているので、現在はキュウリ栽培の研修にも対応できています。今後は、イチゴ栽培や畜産に関する研修についても興味を持っているので、アグリコネクトさんに作成していただいたプログラムを応用していければいいですね。

今後の大きなテーマとしては、持続可能な地域農業を目指していくことを重要視しています。人口が右肩下がりのなかで、優良農地を維持していくためには新規就農者だけでは限界があります。今いる担い手農家に規模拡大をお願いするのもむずかしい話です。現状を打破するために「企業の農業参入」にも力を入れてサポートしていく必要性を感じているので、困ったことがあれば、アグリコネクトさんに相談したいですね。