AGRICONNECT Co.,Ltd.

和歌山県紀の川市 紀の川アグリカレッジ支援 栽培技術と農業経営が学べる「実践型のイチゴ農家育成プログラム」が始動

2023年05月26日 官公庁・自治体向け事例

クライアント情報

和歌山県紀の川市様

ご担当者様

農業振興課
瀧本 尋紀様


事業内容

2021年6月、「紀の川市」「JA紀の里」「紀ノ川農協」「紀の川市農業委員会」「紀の川市農業士会」の5つの組織で構成された「紀の川市新規就農者受入協議会」が発足。地域一体となって農業の担い手となる就農希望者の受け入れ基盤整備に着手するなか、イチゴ栽培に特化した実践型就農プログラムを構築し、2022年6月から「紀の川アグリカレッジ」がスタートした。多くの自治体が新規就農者の募集に苦戦する中、紀の川アグリカレッジでは一期生、二期生ともに応募倍率は5倍を超え、そのノウハウを知りたいと自治体やNPO法人からの視察や講演依頼が急増している。


「農業」を継続的に振興していくための取り組みを模索していた

和歌山県紀の川市は、年間平均気温17.5℃の温暖な気候と水資源に恵まれています。イチゴ、モモ、キウイフルーツ、カキなどの特産品があり、特にイチジク、ハッサクは市町村別の生産量全国一位です。農業がさかんな地域ですが、担い手不足は全国共通の問題であり、市の基幹産業の農業を継続的に振興していくためには、新たな施策が必要でした。

そんなときに、農業WEEKのイベントブースでアグリコネクトさんと出会い、「新富アグリカレッジ(宮崎県新富町)」での新規就農者育成支援の事例をお聞きしました。コンサルタントを活用した取り組みに可能性を感じ、プロポーザル方式で事業者選定を行った結果、最も評価が高かったのはアグリコネクトさんでした。ほかの事業者でもコンサルティングの実績はありましたが、農業に特化しておられる点や新富町などの支援実績が決め手となりました。さらに、国の事業「地方創生交付金」の活用を提案していただき、予算的な問題がクリアできたことも大きかったです。

アグリコネクトの新規就農者支援の実績(一例)

  • 実践型農業研修プログラム(宮崎県新富町、東京都)
  • 新規就農者向け座学研修・募集支援プログラム(北海道、山口県)
  • 雇用就農促進支援(北海道、沖縄県)

研修の要となる基本方針策定から支援「実践型のイチゴ農家育成プログラム」を構築

今回のプロジェクトは、1年目で研修プログラムの基本方針策定や受入体制整備等の基盤整備、2年目でカリキュラムの作成や研修生募集、3年目で一期生の研修をスタートさせるというもので、3年間のスケジュールが組まれていました。

1年目に研修の対象とする品目選定では果樹も候補に上がりましたが、最終的にはイチゴに決定しました。市内にはイチゴ農家が多く、人気品種の「まりひめ」は県内トップの生産量だったことや、収益性がよいというのが理由です。

2年目は、研修先農家の選定や2年間のカリキュラム作成、研修生募集を中心に動きました。
研修先農家の選定の際には、紀の川市とアグリコネクトの前田さんが面談に同席し、栽培技術だけでなく、売上や経営規模など、その農家が「経営的に成り立っているか」「研修生を育成することができるか」を総合的に判断していきました。これまでに、経営的な視点から「農家を選ぶ」という経験がなかったので、アグリコネクトさんの農業コンサルとしての視点は、大変参考になりました。

研修先農家を選定した後は、アグリコネクトさんが農家とのヒアリングを行い、実践型就農プログラムの具体的なカリキュラム作成を担っていただきました。

紀の川アグリカレッジ 実践型の就農プログラムの特長

  • イチゴに特化した実践的なカリキュラム
  • プロ農家の元で行う栽培実習
  • 地域特性に適した栽培マニュアル
  • 年間の作業を見える化した研修チェックシート

※研修チェックシートには、農家からヒアリングした内容をもとに65項目の作業工程が分解されている。実習先農家と研修生の双方が、教えたか、教えてもらったかをチェックすることができ、すべての作業が抜け漏れなく教えてもらえたか確認できる。

農家は、栽培技術については熟知していても、販売など流通や経営に関しては苦手な人も多いです。その部分をアグリコネクトさんが講義をしてくれたり、講師を紹介してくれたりと補填していただき、とても助かりましたね。

研修生募集では、研修希望者に紀の川市まで来ていただき、実習先農家や地域を回る「現地視察会」を2回開催しました。2回とも締切前に定員を超える申込を頂きました。アグリコネクトさんには視察会の前段階から参加者とコンタクトを取っていただき、研修に参加したい理由や、就農への意欲などの情報収集をしてもらっていました。研修先農家訪問だけでなく、紀の川市への移住を前提に、病院やスーパーなど移住者が知りたいインフラについて知ってもらうことができたのも、アグリコネクトさんのアドバイスによるものです。参加者の事後アンケートを見ても非常に満足度が高かったですね。


運営の全体管理と高倍率の応募につながった広報宣伝ノウハウ。
農業コンサルを活用するメリット

アグリコネクトさんには研修を運営していく上で必要な年間スケジュールの設計や日ごろの会議、現地視察会などの進行管理も全ておまかせしています。コンサルティングをお願いして、いちばん助かっているのは研修で学ぶべき内容の棚卸と整理です。研修生が栽培技術を習得するにあたって、どの時期にどんな作業があるのかを体系化する必要があります。農家は栽培日誌などはつけていても、経験と勘でなんとなくやってしまっている作業も多いです。それを事前にヒアリングして、マニュアル化していただいたのはアグリコネクトさんですし、研修生も事前に「この時期にこれだけのことをやるんだ」「研修を終える2年後には自分だけで栽培ができる」というのが見えるので、安心できたと思いますし、運営を進める上で困ったときにはすぐに対応してもらえるところもありがたいですね。

これまでも就農相談は何件かあったのですが、「紀の川市ではこんな作物ができますよ」といったあいまいな提案しかできませんでした。アグリコネクトさんに入ってもらいイチゴ栽培に特化した研修プログラムができたことで、就農後のビジョンが描きやすくなったと思います。研修生からも、「就農相談の際に、紀の川市さんは具体的なビジョンを持っていたので、信頼して参加した」という声もいただいています。紀の川アグリカレッジのビジョンや研修内容を伝える、ホームページやチラシ、小冊子などの広報ツールもとても役立っています。

小冊子などのツールは、就農相談だけでなく移住相談にも活用させてもらっています。移住して、その先の職業の選択として「農業」を提案しやすくなりました。紀の川市に移住したいという人は、農業に興味のある人も少なくありません。栽培だけでなく農業経営についても学べる、しっかりとした研修プログラムがあるのは強みです。

これまでは広報課からプレスリリースを発信して、問い合わせがあれば対応する、という形で動いてきましたが、農業や新規就農に興味のある人に向けて、必要な情報が必要な人に届く積極的なPRができていると感じます。2022年から研修をスタートした一期生の応募には、3名の定員に対して6倍以上、2023年スタートの二期生についても5倍以上の応募がありました。応募倍率が高かったのも、アグリコネクトさんのノウハウを活かした広報宣伝効果によるところが大きいですね。


農業を軸に地域活性化が加速。今後は新しい品目での研修プログラムも視野に

紀の川アグリカレッジでは、就農希望者から「研修を受けたい」という問い合わせも増えてきています。研修時期や品目の希望によっては、紀の川市新規就農者受入協議会のメンバーでもある紀ノ川農協のトレーニングファーム部会「ふたば塾」、JA紀の里の「あら川の桃トレーニングファーム」をご紹介することも多くなり、紀の川アグリカレッジを通して市内の農業が連携し、地域の活性化にもつながっています。

研修希望者のみならず、各自治体やNPO法人からの見学希望も増えています。最近は、講師としてお話させていただく機会も増えて、忙しくなってきました(笑)。

2023年は一期生の研修2年目と二期生の研修1年目、さらに三期生の募集が重なるために、まだまだやらなければならないことがたくさんあります。研修後、独立就農した人のサポートについても考えていく必要がありますね。幸い、一期生、二期生に関しては、研修先農家の尽力や研修生の親類縁者などの協力によって、すでに農地やハウスを用意できている人も多いのですが、今後はどのように情報提供していくかも課題です。

アグリコネクトさんとのプロジェクトは3年契約でしたが、1年間契約を延長し、引き続き支援をお願いすることになりました。それ以後も、情報発信などの広報的な場面でご協力いただくことになるかもしれませんし、果樹栽培にも対応できる研修プログラムの構築を視野に入れ、今後も活動していきたいと考えています。