AGRICONNECT Co.,Ltd.

アグリビジネス新規事業創出事例(アサヒクオリティー アンドイノベーションズ様)

2022年07月21日企業向け事例

国内の実証試験から海外展開まで、
一緒に歩んでくれるパートナー。

クライアント情報

ご担当者様

元 アサヒクオリティー アンドイノベーションズ株式会社
現 アサヒバイオサイクル株式会社
サステナビリティ事業本部 アグリ事業部長
上籔 寛士 様


事業内容

アサヒグループの事業は酒類(アルコール)、飲料、食品の国内・海外での製造販売が中心。アサヒクオリティー アンドイノベーションズ(以下、AQI)は、グループの新しい理念”Asahi Group Philosophy”に基づく企業価値向上のために、研究戦略の立案、研究開発、新規事業創出に取り組む組織として2019年に設立した。国内のビール工場や飲料工場での製造過程で生じる副産物を付加価値の高い有価物として利活用することも重要な検討課題の1つとして取り組んでいる。

製造で生じる副産物を利活用する事業。

ビールを醸造する過程で残るビール酵母は、栄養分やうまみ成分を含む中心部分と、それを覆うビール酵母細胞壁で構成されています。中心部分は早い段階から調味料などに活用されていました。そこからさらに、ビール酵母の付加価値を高める方法を日々検討課題として取り組む中で、ビール酵母の中心部を取り除いた細胞壁を加工し、農業資材に活用する技術も確立することができました。この成功により事業化されたのが2017年に設立されたアサヒバイオサイクル株式会社です。
ビール酵母に続き、コーヒー飲料の製造過程で生じるコーヒー粕も有価物化できないか検討を進めていたところ、アサヒバイオサイクル(以下、ABC)が設立したのと同じ2017年に、関西大学化学生命工学部の河原秀久教授に出会いました。河原教授は、コーヒーの抽出物に含まれるポリフェノール物質が氷点下1度以下で凍りにくくなるという過冷却促進作用を研究されていたんです。関西大学でも、この研究の事業化を見据えて、2016年に創発ベンチャー企業、株式会社KUREi(カレイ)を立ち上げていました。このカレイと協同で、過冷却促進作用を農業分野の凍霜害防止剤として応用できないか、と検討に入ったのがこの事業のきっかけとなりました。

2017年に検討を開始した段階ではまだAQIは設立されておらず、持株会社のアサヒグループホールディングス株式会社の経営企画部門でのスタートでした。2019年4月にAQIが設立するとともに事業案を移管し、現在に至ります。

参考:
凍霜害のリスクを下げる!「フロストバスター」特集
https://agripick.com/10438

試験販売を始めるにあたり、農業スペシャリストの力が必要だった。

2017年に事業化検討を開始しましたが、当初はラボ試験、圃場試験などはクイック・アンド・ダーティに自社のみで行っていました。新規事業は、なかなかうまくいかずに中断する案件もあるため検討の初期段階では費用がかけられなかったためです。
データ収集はWebを駆使して行い、試験先の農家やインタビューする有識者を探すときは個人のつてをたどったり、飛び込みでお願いしたり…と、担当者がマンパワーで実施していました。
霜害に対する試験は、時期が限られているために数年というスパンで行う必要があります。そういう難しい状況下にあったにかかわらず、実証試験は芳しい結果を得られました。
次のステップである試験販売に進むにあたって、自社のコネクションだけで販路を拓くのは難しいところがありました。また、果たしてこのまま進めていいのか、詳細分析や戦略立案は農業のスペシャリストにお願いしたほうがいいのではないか、という声も社内にありました。防霜対策の市場というのはWebで調べても答えが得られるものでもありません。会社からも規模がどれくらい見込まれるのか何度か確認されたのですが、根拠になるロジックをなかなか示せないでいたのです。
農業分野で先行しているABCの担当者にその旨相談したところ、「事業化の出口に近いところでお力添えをいただいた農業コンサルタントがある」ということで紹介されたのがアグリコネクトさんでした。
ちなみに、ABCとアグリコネクトさんの関係は2013年ごろからで、市場性や事業規模といったところを調べていただいたと聞いています。

弊社がアグリコネクトさんに最初にお声がけしたのが2019年の夏ごろでした。その段階で、アグリコネクトさんに市場を調べていただき、「それくらいの市場規模があるなら魅力的だね」というところが見えてきました。

一方的なアドバイスではなく、一緒に考えてくれる。

そこから3年弱お世話になっていまして、フェーズごとに相談内容は変化してきています。
当初は、防霜剤の「フロストバスター」という名称も決まっておらず、どういうカテゴリーで売ればいいのか手探り状態でした。日本の法規制を鑑みたときに、肥料になるのか活性剤になるのか。逆に、規制を気にせずに進めていけるのだとしたら、戦略をどう描くのが理想的なのか。アグリコネクトさんは一方的なアドバイスをくださるのではなく、一緒に考えて進めてくださいます。
検討した結果、肥料扱いではなく、一般的な農業資材として取り扱うことになり、長野県でスモールスタートでの試験販売を始めました。それまで我々が行っていた試験が長野の果樹中心だったことを踏まえ、ターゲットとなる場所を定めました。
本格的に販売する際は日本農薬株式会社さんにお願いすることが決まっていましたが、試験販売段階でのパートナー開拓やパイプをつないでくれたのもアグリコネクトさんでした。

海外展開のコンサルもお願いできる。

仮説の創出と検証を高頻度で行い、トライ・アンド・エラーを繰り返すことで分かったこともあります。例えば、対象品目を野菜に拡大する試みです。資材導入による費用対効果でメリットがある野菜品目の仮説を立て、市場性の評価や効果検証・実証試験に取り組みました。我々としても生産者への資材販売機会が増やせることはメリットがあります。
野菜は売価が安いものも多く、防霜対策に費用をかけられる作物が限定されます。絞り込んだ品目で市場規模を推計したところ、やはり果樹に比べると市場規模が小さく、また、効果検証試験で課題も発見できました。
もちろん、いずれは野菜にも広げていこうという意向はあります。でも、今は優先度を下げることを選択しました。
仮説を立てて検証を繰り返し、必要に応じて優先順位を変えるという判断ができたわけです。防霜対策の試験は1年に1回しかできないうえに、日本国内で霜が降りる時期は集中します。できるだけ多くの実証試験をこなしたくとも、社内の人員だけで回すには限界がありました。アグリコネクトさんには2021年から大規模に試験先を開拓いただき、さらに試験の管理まで担当をお願いできて、大変助かりました。
現在は、りんごとぶどう、お茶を中心に実証試験を行っています。試験する品目と件数は意図的に絞っています。というのは、海外展開を見据えているからです。

海外展開は、国内での事業化が進んでからと当初は考えていましたが、海外への進出は時間がかかるため並行して行わないと何年経っても進捗しないだろうという結論に達しました。この1年は、国内での実証試験を続けながら、海外市場を調べていただき、海外での霜害の分析から、我々がまず展開すべき国はどこなのか候補をご提案いただいています。まずは北半球のヨーロッパとアメリカから国と地域を絞り込んでいて、次に季節が逆になる南半球での実証試験も進める予定です。

その地域での販売に向けて何を用意しなければならないのか、どんな規制をクリアしなければならなのか。試験の開拓や現地での実証試験の管理もお任せし、多面的にサポートいただいています。

アグリコネクトさんは、細かいことから、海外のどこに進出すべきかという大規模なところまで、なんでも相談できるという意味で心強い存在です。

最初にお会いした頃は、予算これくらいで相談できないか、というようなお話をしていたくらいだったのですが、まさかこんなに長く、かつ信頼してお任せするようになるとは思っていませんでした。

実証試験も試験販売も前進しているとはいえ、まだ道半ばの状態です。国内での展開に比べると海外への開拓は非常にハードルも高く、アグリコネクトさんに頼らざるを得ません。そこをしっかりサポートいただき、ゆくゆくは国内以上の成果を海外であげられることを期待しています。