AGRICONNECT Co.,Ltd.

農業向け商品・サービス開発事例

2021年02月08日企業向け事例

クライアント情報

大手化学メーカーA社


プロジェクト背景

A社は、さまざまな植物から抽出するエキスを原料とする化粧品事業を展開。その中の一つのエキスが農作物に好影響を与えることが研究開発で判明し、農業者向けの資材として展開・普及を目指している。A社では、花卉(かき)・果樹・水稲などさまざまな作物で異なる効果が確認でき、費用対効果の面で農業経営を向上させられる水稲分野での商品化を行ったものの、効果を示すエビデンスが乏しく、メカニズムも解明できず、極少数の販売量に留まっていた。また農業分野のターゲット農業者が特定できておらず、適した販売チャネルが選定できずにいた。

そこで、農業分野、特に水稲領域の業界理解を助け、開発資材の普及展開が進められるサポートを行うこと、普及展開するターゲットに合わせて必要なエビデンスを獲得できる実証試験を行うこと、実証試験のエビデンスとチャネル調査をもとに普及展開が進められる販売パートナーを獲得することを弊社への期待とし、プロジェクトが開始した。


実施フロー

  1. 資材効果提示に必要な試験協力先の獲得
  2. メカニズム解明を進められる研究パートナーの獲得
  3. 水稲分野における商品効果が提示可能な試験内容の設計
  4. 資材効果を確認する試験圃場視察コーディネート
  5. 協力先の試験遂行のフォロー、大学での収量試験など、実証試験全般の運営
  6. 試験結果の分析とレポート
  7. 水稲分野における販路拡大方針の策定
  8. 商品の普及・展開を代行できる販売パートナーの開拓とコーディネート

概要

1. 資材効果提示に必要な試験協力先の獲得

最終的に販売先となるターゲットを特定しておくことで、示すべきエビデンス、満たすべき商品スペックが見えてくる。国内最大の農作物マーケットである水稲において、資材効果が発現する条件(品種・農法・資材用法詳細)が明らかになっていないため、さまざまな条件で協力先農業者を獲得した。

獲得した試験協力先

  • 用途別(主食用:地域を牽引する大型農業経営者/業務用:業界を代表する超大型業務用米農業経営者/酒造用:地域文化保全まで視野に入れ、JA・官・契約農家と連携して酒造用米研究に取り組む有名酒造メーカー)
  • 試験後の周辺への展開を見越した地域別(東北/北陸/北関東/九州)
  • 商流別(全国的に水稲で有名な大型JA、産地を担う大型の米集荷企業)
  • マーケットの大きさを優先した品種別(コシヒカリ、みつひかり、五百万石…)
  • 資材特性を活かした有機領域(有機栽培農家、超高品質米栽培農家)

農業界のネットワークを活用し、関係先の先進農業経営者や、新たにアプローチして関係を築いた先に対して、研究開発成果と試験実績、商品原料と作物への影響を説明し、試験協力に際しての条件調整を行い、大枠合意を形成。その後、クライアントと共に協力先を訪問し、最終合意を形成。上記を3カ月で実施し、延べ協力先数は20件に上った。

なお、試験協力先との合意は以下のポイントを押さえて取り組む。

  • 試験の影響による協力先農家の減益を考慮した補償額調整
  • アグリコネクト株式会社が支払スキームの間に入ることによる与信・口座管理の作業負荷の低減
  • 秘密保持・損害補償・中途解約など、必要内容をすり合わせた上での協力先との契約締結

全国的に展開した試験実施体制

日本地図マップ
開拓先一覧

2. メカニズム解明を進められる研究パートナーの獲得

農業商品の普及・展開に重要な要素として、効果を数値で示せることが挙げられる。
次に重要なことは、技術力の高い販売パートナーが販売時に説明できる効果発現メカニズムが明らかになっていることである。

当資材はメカニズムの解明が完了していなかったため、水稲領域を専門とする研究機関を開拓し、全国圃場試験の監修と結果に考察を委託した。

獲得した試験協力先

  • 水稲の収量構成要素と照合して評価・推察を行う国立大学農学部長
  • 細やかな試験遂行で精緻なエビデンスを獲得できる農業試験場2カ所
  • 酒造メーカーの研究会に属している普及センター

3. 水稲分野における商品効果が提示可能な試験内容の設計

メカニズムが解明されておらず、最適な用法が確立できていない中での試験であったため、最終的な収量の比較に留まらず、水稲の栽培フェーズごとに、各地の農法に添った形での試験栽培内容を設計した。

具体的には、

  • 種籾の浸種・消毒フェーズ
  • 育苗フェーズ
  • 定植フェーズ
  • 収穫フェーズ

また、農業経営現場でのエビデンスの価値は高い一方、本業と並行して試験に取り組む協力先には負荷がかかるため、獲得したいエビデンスと農家労務負担の双方の視点を汲み取りながら、試験内容を設計し、試験協力先と調整した。

水稲は日本各地で品種・農法の違いが大きいため、これらと資材用法を掛け合せても効果発現できることが全国普及には重要である。今回は、この取り組みにより、特に効果の高い資材の用法・品種・種籾の消毒方法が明らかにできた。

試験内容の設計・試験マニュアルの作成

4. 効果を確認する試験圃場視察コーディネート

農業分野で販売拡大していく際には、販売パートナーのみに全面委託するのではなく、メーカー側も率先して販売訴求・販売説明していくことで農業者の信頼が高まり、普及が加速する。その意味でも、メーカーは現場での資材効果や使用者の声を把握しておくことは重要である。

資材効果が発現すると見込んだ栽培フェーズと資材効果の最終評価となる収穫前の2回に分けて現場視察をクライアントと共に実施。
農業経営現場での結果を確認すると共に、農業経営者と意見交換を実施。

5. 協力先の試験遂行のフォロー、研究機関での収量試験など、実証試験全般の運営

実証試験を初めて行う協力先農業者などには、随時連絡を取り、試験内容や手順の説明を実施。また、必要に応じて、各地視察時には当社自ら坪刈りなど、測定用サンプルの採取までを行う。
精緻な数量・重量比較を行う際には専門機器のある研究機関の協力を得て測定を実施。協力先農業者は本業と並行して試験に取り組むことになるため、測定実施漏れなどがないよう、全協力先ごとのスケジュール管理をしながら推進する。同時に、協力先との密なコミュニケーションから、現場での農作物への効果発現状況や推測される作用などを収集していく。

6. 試験結果の分析とレポート

測定・集計結果を元に、統計分析を実施し、資材効果を評価。
上記定量情報に加え、現場からの定性情報と掛け合わせ、仮説を導く。
協力先に研究機関がいる場合には研究機関とのディスカッションも行い、分析結果と示唆をレポーティングし、クライアントとディスカッションを行う。

7. 水稲分野における販路拡大方針の策定

実証試験の結果を踏まえ、対象として有力な地域・品種・農法を絞り込む。同時に、マーケット側のリサーチを実施。対象品目の産地、ターゲット農業経営者の経営規模分布、主流な農法、地域ごとの商系/系統の特徴と流通比率、などを軸にターゲットエリアを絞り込む。

大枠の販路拡大方針を策定したのちには、資材使用タイミングと親和性の高い販売パートナー業態など加味しながら、アプローチ先をリストアップしていく。

8. 商品の普及・展開を代行できる販売パートナーの開拓とコーディネート

農業界での商品の普及展開促進に向けて、リストアップした販売パートナー候補を評価・選定していく。当社では農業経営者ネットワークを駆使して、販売パートナーを農業経営側から評価。商品の目的である農業経営の向上という視点で農業経営者にアプローチできるパートナーを選定する。

販売体制・販売条件・本格販売までのスケジュールなどを予めすり合わせした上で、クライアントとの面談をコーディネートする。


成果

  • 実証試験
    ・資材の正しい用法の発見
    ・業界に訴求力のある農業経営体での増収実績づくり
    ・有力研究者によるメカニズム仮説のブラッシュアップ
  • 販路開拓
    ・全国に販売網を持つ販売パートナーの開拓
    ・資材導入し得るターゲット農家に訴求力のある各地の有力販売企業の開拓
  • 事業開発
    ・業界慣習や協業し得る販売パートナー組織の理解
    ・販売パートナーとの新たな用途開発の試験体制の確立